お薬不足が深刻です
前提として
前提として、薬は症状を一時的に抑えるだけで根本的に解決させるためのものではない。
極端に言うなれば「見たくないものに蓋をする」ようなもの
表現が不適切であることは重々承知ですが、例えるならばそんな感じ。
とはいえ、難病や慢性的疾患に苦しまれている方にとっては、生きていく上では重要であるのも事実。
さらに、手術を行う際に補助的に用いる麻酔薬やがん治療のために用いる抗がん薬といった大切なく薬もあるため、全部が全部いらないとは思わない。
自分自身、病院や薬局といった医療現場で働いてきた薬剤師であることをご理解していただきたい。
知ってほしいお薬不足の現状
そのうえで、知ってほしい現状がある。
コロナ禍で浮き彫りになったとある製薬会社での不適切な製造やずさんな品質管理の問題。
これを皮切りに、ドミノ倒しのごとく相次いで業務見直しの連鎖続いた。
連鎖する製薬会社のドミノ倒し
会社Aに業務停止命令が出ると、当然ながらその工場で生産している薬は販売できなくなったり、流通量を制限せざるを得なくなる。
すると、その類似の薬を製造販売している会社Bの出荷数が増え、医薬品市場の均衡が崩れ始める。
医療現場、特に病院の薬剤部や地域の薬局では、
「会社Aの薬が出荷制限かかったらしいよ…うちの在庫少ないな・・・念のため発注しとこ」
などの動きが始まる。
こういった動きでがあって、特定の薬の需要が高まり、市場からの枯渇が加速する。
基本的に、薬(医薬品)の製造量や出荷量はあらかじめ計画された分量をつくる。
そのため、急な増産体制を構築することは苦手。その結果、医療現場で需要が高まると途端に枯渇する。
それが今、会社Aだけでなく、会社B、C、D、E・・・など複数の製薬会社で起こり、医薬品市場は乱れに乱れまくっている。
不足する薬の数々
不足している薬についてみてみよう。
一部の抗菌薬(抗生物質)、解熱剤、咳止め、気管支拡張薬、抗炎症薬、一部の漢方薬、抗がん薬、麻酔薬などさまざま。
新型コロナウイルス感染症(コロナ)のパンデミックで、日本国内でのいわゆる ❝かぜ薬❞ 需要が高まり、症状を抑えるだけの薬が市場から消えた。
国民全体の意識として、「咳をする=コロナ」というレッテルが貼られ、「咳は止めなきゃ」という意識が芽生えてしまった。
咳の症状は、体から異物(ウイルス)を排泄しようとする生理反応であり、決して止める必要があるわけではない。
にも関わらず、大衆の目が気になってしまい、薬で無理やり止めたいと希望される方は多い。
もはや咳止めを服用することがエチケットのようになってしまっているようにも感じる…
一人一人の患者さんに「咳止めはあまり使わない方が良いですよ…返って治療期間が延長してしまうこともありますし。。。」と説明したところで、残念なことに大衆の目から逃れる方が優先順位が高い。
ましてや今更、国民全体の意識を変えることなんてなかなかできることではない。
慢性的な呼吸器の病気やがんの終末期などで、咳止めが本当に必要な方に届かなくなってしまう恐れだって十分にある。
本当に困った現状だ。
インフルエンザが早期に流行している現状では、まだまだかぜ薬の需要が下火になることはなさそう。
病院、クリニック、薬局、施設などでは、お薬不足で本当に困っています。。。
そんな現状を知った上で、病院に来てもらえると嬉しいな。